自宅でコーヒーを淹れる際、どのような抽出方法で淹れていますか?コーヒーを抽出する器具や方法は沢山あります。今回は抽出器具ごとの特性や、自宅で淹れる際に気を付けるポイントなどをHARIO Official Shopならではの観点からご紹介いたします。
1.いくつ知ってる?コーヒー豆の抽出方法8選
ペーパードリップやサイフォン、フレンチプレスなど様々な淹れ方があるコーヒー。使用する抽出器具を変えると味も大きく変わることがあります。
実は、抽出方法もコーヒーの味わいを決める重要な要素の1つです。
主な抽出方法を8つ、それぞれどのような特徴があるかご紹介致します。
①ペーパードリップ
ペーパーフィルターとドリッパーを使用してコーヒー粉にお湯を注いで抽出する方法。抽出後はコーヒーかすとペーパーフィルターをまとめて捨てるだけなので、非常に扱いやすく衛生的です。
『透過式』の抽出方法で、抽出の仕方によって、無限とも言える程の様々な味わいを生み出せる自由度も、ペーパードリップの魅力。
ペーパーフィルターで抽出したコーヒーは、コーヒーの持つ油分(コーヒーオイル)を吸収するため、スッキリとしたクリアな味わいになりやすい特徴があります。
②ネルドリップ
ネル(フランネル)というコットンで作られた布のフィルターを使用した『透過式』の抽出方法です。古くから存在する、いまなお人気のある抽出方法。
ペーパードリップと同様に『透過式』の抽出方法ですが、フィルターは使い捨てではなく、水洗いして繰り返し使用することが可能です。
ネルフィルターはペーパーフィルターと比べて目が粗く、コーヒー豆の旨味成分でもある油分(コーヒーオイル)も抽出できるため、滑らかな甘さとコクのある味わいになるのが特徴です。
③ステンレスフィルター
金属フィルター(ステンレスフィルター)を使用した抽出方法。金属フィルターとは主にステンレス製の微細なメッシュ状のフィルターです。
抽出後はコーヒー粉を捨て、水洗いをするだけで良いのでお手入れも簡単。さらに、ペーパーフィルター等の消耗品を必要としないため、経済的で環境にも優しいドリッパーです。
ステンレスフィルターも『透過式』の抽出方法です。ペーパーフィルターやネルフィルターと比べ目が粗いため、コーヒーオイルやコーヒーの微粉も抽出され、どっしりとコクのある味わいになりやすい特徴があります。
④コーヒーメーカー
電動のマシンを使用した抽出方法。『ペーパードリップ』の方式を採用した製品がポピュラーで、水とコーヒー粉(コーヒー豆)をセットするだけで利用できる手軽さが魅力。
味わいや杯数を選択できる機能が備わったコーヒーメーカーもあり、一度設定を決めてしまえば、毎回安定した味わいのコーヒーを抽出できるという利点もあります。
⑤コーヒープレス
フレンチプレスやカフェプレスとも呼ばれる、プレス式の器具を使用した『浸漬式』の抽出方法です。日本では紅茶用の器具として親しまれるフレンチプレスですが、元々はフランスでコーヒーの抽出器具として開発されました。
粗挽き~中粗挽きのコーヒー粉を使用し、コーヒーの粉にお湯を注いで数分待った後、ツマミを押し下げて金属のメッシュでコーヒー粉と抽出液を分離します。
目の粗いフィルターを使用しているものが多く、コーヒーの油分まで抽出できるため、コーヒー豆の持つ特徴を感じやすい風味に仕上がります。
⑥コーヒーサイフォン
フラスコ内の水を火にかけ、沸騰時の蒸気圧を使用してお湯を移動させながら抽出する『浸漬式』の抽出方法です。
沸騰したての温度の高いお湯で抽出できるため、香り高いコーヒーが出来上がるところがポイント。フィルターの種類は主にペーパー・ネル・ステンレスなどがあり、それぞれ出来上がったコーヒーの味わいや使用方法に違いがあります。
科学の実験のような雰囲気で、水が押し上げられ、コーヒーが下りてくる様子が、見た目にも非常に楽しいところも大きな魅力です。
⑦水出しコーヒー
『コールドブリュー』とも呼ばれる水出しコーヒーとは、その名の通り冷水で抽出する方法です。お湯で淹れるコーヒーとは異なり、ゆっくりと時間をかけて抽出することで、コーヒー豆の風味を存分に引き出します。
主に、コーヒー粉を冷水に浸す『浸漬式』と、コーヒー粉に冷水をポタポタと滴下する『滴下式(透過式)』の2種類があり、それぞれ味わいにも違いがあります。
コーヒーの持つ苦味や渋みの成分は、冷水には溶け出しにくいため、口当たりがよくやわらかな甘みのある味わいになりやすいのが特徴です。
⑧エスプレッソ
細かく挽いたコーヒー豆に高い圧力をかけて短時間で抽出する『透過式』の抽出方法。
直火式・電気式のエスプレッソマシンを使用して圧力をかけ、お湯を短時間で透過させるため、濃厚なコーヒーでありながらも雑味が少ないのが魅力。表面にはクレマと呼ばれる細かな泡の層ができ、クリーミーな口当たりになります。
砂糖やミルクとよく合い、アレンジメニューが非常に多いのも特徴です。
『浸漬式』と『透過式』って?
『浸漬式』とはコーヒー粉をお湯(または水)に浸すことで、成分を抽出する方法。フレンチプレスや水出しコーヒーなど、抽出にテクニックを必要としない抽出器具も多く、コーヒー粉量・水温・時間を一定にすることで、同じ味わいを再現しやすいところが特徴。透過式と比べて成分の抽出速度は遅く、成分が飽和した時点で抽出が止まります。
『透過式』とはコーヒー粉にお湯(または水)を通過させることで成分を抽出する方法。ペーパードリップやエスプレッソなど、抽出にテクニックを必要とする抽出器具が多く、コーヒーに個性をつけやすいところが特徴。浸漬式と比べて成分の抽出速度が速く、お湯を注ぎ続ける限り、コーヒー粉から成分が無くなるまで抽出され続けます。
2.ご自宅で美味しいコーヒーを淹れるには
美味しいコーヒーを淹れるといっても、コーヒーの豆から液体になるまで、その工程はいくつかのステップに分かれています。その中でも以下の5つの工程に注目してみましょう。
- コーヒー豆の選択
- コーヒー豆の焙煎
- コーヒー豆を挽く
- コーヒーを抽出する
- コーヒーを味わう
①コーヒー豆の選択
複数の産地のコーヒー豆を混ぜたものを「ブレンド」、単一の産地のコーヒーを「ストレート」と呼びます。「ストレート」の中でも、特に農場・生産者・品種・精製方法などが同一なコーヒー豆を「シングルオリジン」と呼びます。
コーヒー豆の産地や品種によって、華やかなフルーティーな味わいが感じられるもの、コクや苦味を感じられるものなど、多種多様な特徴があるので、自分好みのコーヒー豆を探すのも楽しみの1つです。
②コーヒー豆の焙煎
コーヒー豆の焙煎は、生のコーヒー豆に熱を加えてコーヒーの風味を決定づける、非常に重要な工程です。焙煎時間や焙煎時の温度によって「浅煎り」「中煎り」「深煎り」などの焙煎の度合いが生じ、豆の色や風味が大きく変化します。
一般的には、浅煎りのコーヒー豆ほど「酸味」が強く現れ、深煎りのコーヒー豆ほど「苦味」が強く感じられるようになります。
既に焙煎されたコーヒー豆を購入することが多いと思いますが、手網やホームロースターを使用して自宅で行うことも可能です。
③コーヒー豆を挽く
豆の状態では、コーヒーを抽出することは出来ないため、コーヒー豆を粉状に「挽く」作業が必要となります。豆を挽くことでお湯(水)に触れる表面積が大きくなり、コーヒーに含まれる成分を抽出しやすい状態にします。
抽出器具ごとに適した挽き目があり、粒度が適していないとうまく抽出されずに薄味のコーヒーが出来上がったり、抽出されすぎてエグみや雑味の強いコーヒーになってしまう可能性があるため、注意が必要です。
コーヒー豆を専門に扱うお店であれば、その場で挽いてもらうこともできますし、手動のコーヒーミルを使って、手軽に挽くことも可能です。自宅で挽く際は据え置き型の電動グラインダーが大変便利です。
④コーヒーを抽出する
抽出については、上述した抽出方法から好みのものを探すところから始めましょう。『ペーパードリップ』が国内では最もポピュラーな抽出方法です。
ハンドドリップは、お湯を注ぐスピードや、コーヒーの粉にクルクルと円を描く注ぎ方など、テクニックが必要のように思えますが、コーヒーの抽出において味に大きく影響する『コーヒー豆の量』『お湯の量』『抽出時間』『豆の挽目』『お湯の温度』の5つの要素にこだわれば美味しく淹れることができます。
そのため、ドリッパー等の抽出器具の他に、抽出したコーヒーを溜めるコーヒーサーバー、コーヒー粉やお湯の重さと時間を計ることができるコーヒースケールなどを揃えることでさらに本格的にコーヒーを淹れることができます。
⑤コーヒーを味わう
コーヒーが抽出できたら、存分に楽しみましょう。
『フードペアリング』もコーヒーの楽しみの一つであるといえるでしょう。『フードペアリング』とはそれぞれのコーヒー豆の持つ風味の特性や焙煎方法を考え、相性の良い食べ物を選ぶことです。
すっきりとした浅煎りのコーヒーにはクッキーなどのシンプルなお菓子やトースト。コクのある深煎りのコーヒーにはチョコレートケーキやドーナツなど、相性を考え組み合わせることで、今までになかった発見があるかもしれません。
3.コーヒー豆から抽出する際に気をつけること
抽出器具によって気を付けるポイントも変わりますが、今回は最もポピュラーな抽出方法であるペーパードリップにおける以下の5つの点に注目していきます。
- お湯の量
- コーヒー豆の量
- コーヒー豆の挽目
- お湯の温度
- 抽出時間
①お湯の量
調和のとれたコーヒーを抽出するためには、お湯の量と豆の量の比率を考えることが大切です。お湯の量から決める際はコーヒーカップ1杯が約120mLですので、杯数分のお湯を用意します。
例)2杯の場合
注ぐお湯280mL:コーヒー豆20g:出来上がり約240mL
このとき、抽出したいコーヒーの量より、少し多めのお湯を用意しましょう。コーヒー豆とペーパーフィルターが水を吸い、出来上がりの量が用意したお湯の量より少なくなるためです。
<POINT>
・出来上がりのコーヒーが薄く感じる場合
→注ぐお湯の量を減らす
・出来上がりのコーヒーが濃く感じる場合
→注ぐお湯の量を増やす
②コーヒー豆の量
コーヒー豆の量から決める場合も、お湯の量との比率を考えることが重要です。まずはコーヒーの粉とお湯の量の比率が1:14程度から始めましょう。
例)コーヒー豆25gの場合
コーヒー豆25g:注ぐお湯の量350mL:出来上がり約300mL
<POINT>
・出来上がりのコーヒーが薄く感じる場合
→豆の量を増やす
・出来上がりのコーヒーが濃く感じる場合
→豆の量を減らす
③コーヒー豆の挽目
メッシュとも呼ばれるコーヒー豆の挽目については、使用するコーヒー器具によって調整することが好ましいです。
基本的には細挽きにすれば味が強く抽出され、コーヒー豆の持つフレーバーを引き出しやすく、粗挽きにすれば過抽出になりにくく飲みやすいコーヒーになりやすいといった特徴があります。
ペーパードリップでは中挽きから始め、お好みにあわせて調整していきましょう。
<POINT>
・味が薄いと感じた場合
→細挽きに調整
・エグみや苦味を強く感じた場合
→粗挽きに調整
④お湯の温度
コーヒー豆には様々な成分が含まれており、温度の変化による溶け出しやすさの変化具合は成分によって違いがあります。そのため、抽出時のお湯の温度も味わいに影響があるのです。
コーヒーの酸味成分は低温でも抽出されやすく、苦味成分は高温になるほど出やすい(低温では出にくい)といった傾向にあります。また、同じコーヒー豆でも焙煎によって風味が異なり、焙煎が深いほど酸味成分が弱く苦味成分が強くなります。
したがって、浅煎りは高めの温度での抽出・深煎りは低めの温度での抽出をすることで、調和のとれたコーヒーを淹れることができると言われています。
<POINT>
・苦味が強すぎると感じた場合
→お湯の温度を低くする
・フレーバーがもの足りないと感じた場合
→お湯の温度を高くする
⑤抽出時間
抽出時間もコーヒーの味を左右する大きな要素です。時間が長いと抽出が進み、濃く、味の強いコーヒーになります。反対に、時間が短いと、薄く、軽いコーヒーになります。しっかりと旨味とコクを感じ、過抽出にもならないバランスの良い時間としては2分半~3分程度から始めてみましょう。
<POINT>
・薄すぎる、軽すぎると感じる場合
→抽出時間を長くする
・エグみ、雑味を感じる場合
→抽出時間を短くする
『コーヒースケール』の重要性
カフェや喫茶店でサーバーの下に量り(スケール)を置いて、ドリップしているところを見たことがあると思います。
コーヒー豆の量とお湯の量の比率が違えばコーヒーの味を大きく変化させるため、カフェなどのお店では毎回安定した味を提供するために、「重量」を量りながらドリップしているのです。
お家でドリップする際は、メジャースプーンでコーヒー豆を量っている人も多いと思います。しかし、スプーンは体積のみを量るため、豆の焙煎度によって重さに差があります。また、抽出したコーヒーも毎回目視で同じ量を量るのは至難の業です。
『コーヒースケール』があれば重さに加えて抽出時間も同時に計ることができるため、毎回のコーヒーの味にバラつきがあるといった悩みをお持ちの、ハンドドリップを始めたばかりの方にも、コーヒーの味をさらに追及したいといった方にも必須級アイテムと言えるでしょう。
4.コーヒー豆から抽出する方法まとめ
いかがでしたか?今回は、コーヒー豆からコーヒーを抽出する方法や過程、抽出時の注意点についてご紹介致しました。使用する抽出器具や抽出方法にこだわることで、なにげなく飲んでいたコーヒーの世界がさらに広がるはずです。
コーヒーは科学です。コーヒーの味はもちろん、ドリップする過程も一緒に楽しみながら、最高の1杯を見つけてみませんか?